ほうき星
却說司馬懿夜觀天文、見一大星、赤色、光芒有角、自東北方流於西南方、墜於蜀營內、三投再起、隱隱有聲。
これは、皆さんおなじみ三国演義の第104回の冒頭です。
諸葛亮が死んで、大きな赤いお星さまが落っこちるのを司馬懿が見ているシーンですね。
全く別の絵についてお話ししようかなと思います。
話は大きく変わりますが、皆さん、ハレー彗星ってご存じですか?
あー……違いますよ?
この赤い星がハレー彗星だっただなんて荒唐無稽な話をしようとしているわけではないですからね?
まずは演義から少し離れて、ハレー彗星の話をしようかなと思います。
ハレー彗星は75.32年周期で地球に接近する彗星です。
(余談ですが、次は2061年の夏に出現するらしいですよ)
ハレー彗星と聞くと、私なんかはドラえもんを思い出すんですけど、人によっては、前回接近した1986年のことを思い出される方もいらっしゃるかもしれません。
現在の日本人の平均寿命を考えれば、誰でも一生に一度は遭遇する彗星ということになりますから、私たちにとって一番なじみのある彗星のひとつといえるのかなと思います。
そんなハレー彗星ならば、現在の私たちだけでなく、過去の偉人達も遭遇している可能性が高いわけで、今日私がお話しする葛飾北斎もまた、ハレー彗星を目にしたかもしれません。
一枚の絵をご覧いただきましょう。
これは「ほうき星」という作品で、1840年、北斎が81歳の時に描いたものだとされています。
この絵が描かれる5年前の天保6年(1835)にハレー彗星が地球に近づいた記録が残っていることから、この絵に描かれている男性は北斎自身を投影しているのではないか、ともいわれているそうです。
さて、ここでもう一枚。
https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100275195/viewe
これは『絵本早引/名頭武者部類』という絵本の一部分です。
「ほうき星」が描かれた翌年の1841年に作られました。
制作年代の近さも相まって、うーん……同一人物に見えてくるぞ??笑
「ほうき星」のなかに描かれた彗星は、演義に描かれたお星さまにそっくりです。
色もしかり、落ちていく方角もしかり。
また、「ほうき星」が描かれた1840年、中国は清王朝で漢服は禁止されていますから、当時の人物を描いたわけではないことは確かでしょう。
有名なところでは、『北斎漫画』などにもありますが、この『絵本早引』のようにマイナーなところにも、たくさん隠れています。
「ほうき星」のなかの人物が司馬懿であると断定することは不可能ですが、少なくとも何らかの影響を受けていることは確かです。
そう思ってみてみると、絵から受ける印象も違ってくるのではないでしょうか。
さて、最後に、二つ目に紹介した『絵本早引/名頭武者部類』についてお話をして終わりにしようかなと思います。
『絵本早引』三部作のひとつ、『絵本早引/名頭武者部類』には、北斎の軽妙なタッチで、主に日本と中国の英雄たちが描かれており、早引という名の通り、それぞれの英雄にちなんだ漢字一字から、イラストを探し出すことができます。
三国志関係では、11人の英雄たちが描かれているので、誰が描かれているのか、それぞれどんな漢字が割り当てられているのか、想像しながら探してみてください。
途中にもリンクを貼りましたが、もう一度貼っておきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました!